バイオロジーな暮らし

バイオロジーな暮らし

バルコニーの手すりの上でひっそりと佇むカマキリの姿。
この写真は、現在賃貸住宅を建てているオーナーさんから頂いた写真です。
何気ない日常の中で、こんなささやかな瞬間に目を向けるオーナーさんの感性を、わたしは素敵だと思います。

プロローグ

この記事の取材は、昨年10月5日でことでした。
随分と日が経ってしまったので、この記事を読むオーナーさんに怒られるかもですね(苦笑・・)。
今回は、榊住健が建てている賃貸実験住宅のオーナーさんのお話です。
「アイスコーヒーでいいか?とオーナーさん、出てきたのは真空の断熱層で作られた硝子のグラス。
これすごいグラスですねっ、いやいやもっとズゴイのがありますよと言って出てきたのが、チタンが2層になっているグラス。価格は2万円くらいしたかなー、でもね、決してお金があるわけではないよっ」と笑うオーナーさん。
今思うと、最初っから持ってかれちゃった感じでした(笑)。

取材を受けてくれたオーナーさん

バイオロジーな遊び心

建設中の賃貸実験住宅の隣に住んでいるオーナーさん。実は工事中の現場をタイムラプスで撮影して「ニヤニヤ」しているやばい人です。
「この前、合板の床はりをタイムラプスで撮ってみたら衝撃的だったよ、これは飽きない、幅が広いラワン材はいいよね。」と会話が弾んでいるとーーーあっ、スズメが来た!実は(バルコニーを指差し)あそこに餌場があるんですよ。今ね、スズメを増やす大作戦!をやっているんです。シジュウカラやメジロもくるんですよ。剪定した枝で餌場作っているんです。そうそう、白樺もあったけど最近の猛暑で枯れてしまってね。白樺の南の限界線は東京だったの、だから今までは大丈夫だったけど、ここ数年の暑さで枯れてしまったの。シークアーサーも植えているけど、この暑さで生き生きしているわ!オカワカメも美味しいのよ、植えるとね、地面に広がっていくんです。オカワカメは健康食よ。掃除が大変だから刈り取っっちゃったのよ、ホップもありますよ、お酒は飲めないけど天ぷらの中に入れると苦味が美味しいの、毎年夏になると生い茂るからね、ホームセンターで売ってるわよ、グリーンカーテンにおすすめするわーーー」と次々出てくるボキャブラリを浴びた、めちゃくちゃに楽しい時間でした。
オーナーさんの「バイオロジーな遊び心」が伝わりましたでしょうか(笑)。

オーナーさんが手作りした巣箱

賃貸こそ、実験住宅だ!

「賃貸にお金をかける建主さんはいないですよね。」とオーナーさん。
「単身用の賃貸って飽和状態ですし、新しく作っても家賃を叩かれてしまいますよ。フォミリー向けもいっぱいあるし、借りてくれる人がいるかわかりません、ここは足立区なので家賃の設定も安いんです。だから、こんなところに住んでみたいという一握りの人で良いので、そういう方々に向けた住宅にしたかったんです」。
「将来家を建てたい人、高気密高断熱の家ってどんな家だろうって思っている人、ソーラーパネルを載せた暮らしってどんなんだろうって人に、そういう暮らしを試してもらいたい。将来、自分が建てる家をイメージして欲しいと思った。我慢せずに暮らせる家の実体験をしてもらいたかったです。」「そしてここを巣立ってもらってね、自分の家を建てて欲しいって。いいじゃないこういうの(笑)」とのこと。
オーナーさんがどういう想いでいたのか、改めて知る機会となりました。面目ない。

建設中の賃貸実験住宅

大失敗した鉄筋コンクリート住宅

「今住んでいるこの家は鉄筋コンクリート(RC)です。身内の工務店で建てて大失敗!躯体は良かったけど、その他は酷かった。身内が建てたから、甘えがあって工事が酷かった。それだけではなく、RCの家は過酷なんです。昼間蓄熱したら夜は悶々と熱を発するんですよ、本当にね。建てた頃はそんなに暑くなかったけどね、ここ数年は、このままだと寝られずに死んじゃうと思って、それくらい追い詰められましたよ。DIYで遮熱塗料を屋根に塗ってみたりして、これが意外と効果がありました。屋根勾配がきつくて死ぬかと思ったけどね(笑)。そういう経験があったから、快適な実験住宅を建てようと思ったんです」。
実はこのことも、はじめて知りました。。。

左が建設中の賃貸実験住宅 その奥はオーナーさんの住まい

新たな挑戦としての賃貸住宅

このプロジェクトに込められたオーナーの想いは、次世代への大切なメッセージでもあります。それは、賃貸住宅という枠を超えて「暮らしがもっと快適になる住まいを提供したい」という意志。
そういえば、オーナーさんは「本当は井戸を掘りたかったんですよ。足立区だから水は出るので」と言っていました。本当に遊び心のある人です。

この賃貸実験住宅のことは、近いうちに記事にしますので、どうぞお楽しみに!