四半世紀の恋人とやっと初対面できました。
恋人は信州白馬村野平地区(のへい)に、ひっそりと建っておりました。(2011.6.9)
私がその恋人(萱葺き民家)を見たのは、30年前に発行された「民家百選」の写真集です。残雪の北アルプスを背景に、早苗田を敷物の様に、厳かに佇むその姿に一目ぼれしてしまいました。(1981以前の姿)
「住まいの教科書」という本を出版するにあたって、どうしても会いたくて、植田の季節の6月8日に信州を訪ねました。
白馬村観光協会や地域の住民の方々に写真をお見せしながらやっとの思いで探し当てた彼女は、萱葺きではありませんが、その美しさは失っておらず、古老の書家のお住まいになっていました。
窓からアルプスの山並みや棚田が見え、ご近所には今でも萱葺きの家があり、自然に抱かれた環境の中、静かに佇んでいます。
彼女に会う前に、観光協会が「ここにあるでしょう」と紹介された白馬村青鬼地区も、民家集落の風情を残した素敵な地域でした。
歳月の経過とともに、民家の姿はどんどん変わっていきます。失って始めてその存在の大切さが分かるものです。
同時に、私たちの“住まいの形”を、もう少し丁寧に考えてもいいのではないかと思います。
埼玉・木の家・つくり人:小山